以前、ご協力いただいたアンケートのなかで、手持ちの本をきれいに保つ方法などがあれば教えてほしい、というご要望をいただきました。
「へい、おやすい御用!」とばかりに承って、はや1年近くにもなりますか・・・
ちょっとバツが悪くもありますが、ようやくここにご回答申し上げます。
待たせたわりには、実はご期待ほどには中身があまりないかもしれません。当店主は古本屋を営んではおりますが、「本」に関してはプロでもないし知識も乏しいのですよ。
したがって、これまでの経験による話が主体となりますのでよろしくお願いいたします。
まあ逆にそのぶんだけ、わかりやすい話になればいいのですが・・・
3〜4回程度、短く分割してのシリーズを予定していますので、どうぞお付きあいくださいませ。
さて、口調を変えさせていただいて・・・
古本屋というのは、個人の蔵書を買い取って、それを売って商売をしている。
買い取る本というのは千差万別で、当然ながらいろんな状態のものが持ち込まれる。
こちらとしては、基本的にはどんなものでも商品化するのだが、管理さえよければもっと高く買い取れるのになあ、と思われる本の持込も多々ある。非常にもったいない話である。
始めに結論から書いておこう。
本をきれいに保つのは気持ちの問題である。
もっといえばその人の性格によるところが多い。
本を大切にしたい、という発想があれば、そう思うだけでもう半分は勝負あったと思ってもよい。
そう思うだけで、本を投げたりはしないだろうし、散らかして踏むこともないだろう。本をメモがわりにして電話番号など書き込んだりしないだろう。
読んだあと、すぐに捨てるつもりなら別に他人がとやかくいうこともない。ところが、どうせ処分するなら古本屋にでも売ってしまおう、と思うのならとやかくいいたくなる。
読んだらそっと置いておく、その積み重ねだけで大きく状況が左右されるのだから・・・
本当はこれで終わってもいいのだが、そうすると石が飛んできそうだから、そうはいくまい。
まず、前段として本はきれいにしよう、という意識を持っていただきたい。
もし、本を売ることになった場合でも、それが価格として必ず大きく跳ね返ってくるのだし・・・
さて、次は具体的な方法論を語ることにする。
本をきれいに保とうと思えば、まず意識が大切だということを始めに書いたが、今回はもう少し具体的な話をしてみよう。
それでは読み終えた本をどうするか?
それはおおよそ次の3つに分けられると思う。
- 本棚に飾っておく。
- 再読しないかもしれないが、一応とっておく。
- もう読まないのでいずれ処分するか古本屋へ売る。
まずはその保管について所感を述べよう。
本の大敵といえば太陽と水。つまりは紫外線と湿度。
本の日焼けやカビ、黄ばみなどの原因となる。
それをいかに遮断するかが、うまく保管するひとつの大きな要素となる。
理想をいえば、本をビニール(UVカットシート)で包み、防虫や除湿効果のあるシートを敷いた箱に入れ、温度を20℃前後に保ち、湿度50%前後の風通しのよい場所で光の当たらないようにする。
こうすれば、かなりいい状態で長期間保管できるものと思う。
であるが、そのような環境を作ることはまず不可能であろう。
図書館などは比較的いい環境であろうが、それでも完璧ではない。
不可能であるために、本は必ず劣化はするものと思っていい。
その劣化をいかに少なく抑えるか、が重要となってくる・・・
まず、オーソドックスに本棚に並べておく場合。
これは単純であるが、意外に本の劣化は少なく効果は高い。
ただ窓に近い場所などでは、どうしても本が日焼けしやすい傾向にはある。
直射日光があたれば数ヶ月で背は色あせするし、天の部分も焼けて変色することになる。
当、店主の自宅でも、プールが作れるような広大な部屋に生息しているものの、趣味で窓の側に本棚を置いているため、日焼け防止に本棚をカーテンで遮断している。
カーテンレールなど本格的に作っているわけではないため、本の出し入れには多少不便さはあるが、頻度も多くなく本が焼けるよりはまだいい。
カーテンをすることだけでもかなり効果があるのでこれはお勧めである。
窓から離れていて直射日光があたらないから大丈夫か、というとそうでもない。
太陽は届かなくても蛍光灯でも十分に日焼けする。
店舗に並べている本なども、長く売れないものは悩みの種である。置いておくだけでも劣化により商品価値が下がってくるのだ。カーテンをしたいところではあるが、商品を見せないと何屋さんだかわからなくなるため、それはまだ控えている・・・
それでは次に、本棚に並べないとき保管はどうするか?
本を本棚に並べないで保管する場合はどうするか?という話をする。
読んでから、すぐに売ったり処分するなどして手放す場合は、適当にどこかに積んでおけばいいが、いつになるかわからなかったり、読むことはなくても、しばらくは手元には置いておきたいというときには、ダンボールの箱に入れていたらいい。
光は完全に遮断するので日焼けの心配はない。
問題は湿気がこもりやすいので、あまりじめじめしたところには置くのは避けたい。
押し入れのなかとか、ふつう生活している場所であればさほど問題はないのではなかろうか。
ほんとうは風通しのよい場所などが望ましいのだが、段ボールを置く所でそんな爽やかな場所などなかなかありゃしない。
たまに箱から出して、陰干しでもしてやったりするのも理想だが、個人の蔵書程度でそこまでは普通やらないだろう。
その前に部屋の大掃除のほうが先決問題だと思うがいかが?
それで気がつけば数年眠ってしまい、いったい何を入れていたのかさえ忘れていたというのが一般的ではないかと思う。
自分もやれないことは、そうそう人に勧められるもんじゃない。
(自分がやらないことは誰もやらないだろう、という間違った思い込みも多々あるが・・・)
あたしゃやるよ!という方は、是非がんばって、大晦日あたりにでも本もいっしょにメンテしていただきたい・・・
ここで、箱に入れて保管するときにひとつ重要なことがある。
表紙を上か下にして、平積みの状態で並べておくことが大切だ。
ようするに、上から覗き込んで背のタイトルが見えるような並べ方はだめなのだ。
おわかりか?
背を天井のほうに向けて並べた場合には、確かにきちっと隙間なく並べられて見栄えもいいし、本の内容も一目瞭然でわかるが、長期になると重みで本が曲がってしまう。
箱をに何段か積み重ねた場合などは、ますます重量がかかり、ゆがみもひどくなる。
ひどく波のように変形して再利用できなくなることがあるので、注意してほしい。
実際こういう状態での買い取りも意外に多く、中身はきれいな状態でも安くなるし、ひどい場合には買取りお断りとなる。
これは重要なポイントだ。
段ボールだけでなく、棚に並べる場合や、紙袋などに入れておく場合同様なので、肝に銘じておこう。
次が最後になると思うが、本を再生する方法を伝授しておこう。
さて、個人の蔵書だけとしてはここまでやる必要もないのであるが、古く汚れた本をきれいに再生する方法として、当店が行っている方法を最後にご紹介しておこう。
名づけて、リサイクル上級編、とでもしておこうか・・・
きれいに再生するとはいっても、魔法が使えるわけでもなく、「ある程度」「多少」、の範囲内ということで、過度の期待は差し控えていただきたい。
前段で書いたように、保管する場合の完璧な環境は不可能であるため、本が古くなれば、経年に応じて日焼けが生じたり、小口が汚れたり、変色していたりもする。
それが本の中身に及んでいるなると、これはもうどうしようもなく、あきらめるしかないが、小口や天、地など本回りのヤケ等であれば、その部分を紙ヤスリで研磨してやると、かなり生まれ変わることも多い。
どの程度の荒さのペーパーがいいかはいろいろ試していただきたいところだが、当店では#180番を使用している。
ふつう、ホームセンターに売っていると思う。
本の紙質によって違いもあるので、本来ならば何種類か使い分けるのがベターだろうが、当店でもそのあたりはまだ未体験ゾーンである。
ただ、この作業は磨き方にもコツがいるし、粉塵も舞うので、あまり強く勧められるものではない。
大型古書店などでは、小口の白さだけでも買い取り価格も高くなったりするので、実益を望まれる方はチャレンジしてみたらいい。
それよりも、外観を拭くことをお勧めしたい。
表紙の表や裏を布などで拭くだけでいい。ツルツルした表紙であれば、たいていそれだけでキレイになる。
当店では洗剤などを薄めた液を霧吹きにして、本にかけてから拭いている。そうすると、らくがきや軽い汚れなどはほぼ完璧に落ちるのだ。
液は、食器洗いの洗剤やハンドソープなどでもいいし、アルコールなどもいいと聞く。布を湿らすだけでも効果があるので、テキトーにやってみてほしい。
拭くだけだといってバカにしちゃいけないよ。
真剣に汚れを落とすつもりで拭いたら、けっこう力がいる。
何冊もまとめて処理する場合など、終わったときには肩が凝るほどにもなるのだ。
いや、けっして歳のせいではない・・・
ただし、ここでも注意事項があり、和紙やざらついた表紙の本の場合、水は禁物だ。水分を即、吸収してしまい、しみやふやけの原因になるため注意が必要である。
おおかた、こんなものだ。
まきハウスでご注文を受けた本は、このような過程を経て、みなさんのお手元に届けている。
例外なく、ボロボロの本でも1冊1冊に願いを込めて送り出しているのでご安心を・・・
最後に、また始めの言葉に戻るが、本をキレイに保つのは意識の問題である。プロの古本屋にしても、本に直接値段を書き込んだり、中にベッタリ糊付けしたりしている店も多い。
良し悪しの問題ではなくて、やはり意識の問題であろう。
簡単ではあったが、これでおしまいとしたい。
なお、ここで紹介した方法は、当店だけの我流なので、さらにいい方法でもあればご教授いただければうれしい。
ご紹介したなかで、ひとつでも参考になることがあったとしたら、うれしい限りである。